突発性難聴 耳鳴り メニエール病に鍼灸治療が有効です。


突発性難聴

生来健康で耳の病気を経験したことのない人が、明らかな原因もなく、あるとき突然に通常一側の耳が聞こえなくなる病気をいいます。

一般には5060歳代に多く、男女差はありません。飲酒喫煙歴はあまり関係しないようです。

食生活は、あまり関係ないようですが、突発性難聴の患者さんに野菜の摂取が少ない傾向がみられました。

睡眠時間は関係ありませんでしたが、発症前に疲労感を感じていることが多いようです。

おたふくかぜ、はしか、みずぼうそう、じんま疹、胃腸炎、感冒、高血圧、糖尿病、

心疾患の既往が突発性難聴の患者さんに多くみられ、生活習慣病の側面がみられています。

しかし、どのような人が突発性難聴に罹りやすいかという、はっきりとした結論は得られていません。


突発性難聴の原因は残念ながらわかっていません。

急激に発症する感音難聴のうち、原因不明のものを突発性難聴と呼んでいます。

ここでは現在推定されている原因のうち最も有力な2つの説を挙げます。



ウィルスで聴神経が神経炎を起こす説

これは難聴の発症前に感冒(風邪)のような症状を訴える患者さんが少なくないことや、 突発性難聴の罹患が一回かぎりであること(再発はほとんどない)、

おたふくかぜやはしかなどのウィルス疾患が突発的な高度難聴を起こすことなどが根拠となっています。


内耳循環障害説

内耳血管の痙攣や塞栓、血栓、出血などによる循環障害は突発性難聴の突然の発症をうまく説明できます。また治療として血管拡張剤、

抗凝固剤などの循環を改善する薬剤がしばしば有効であると報告されていることも根拠となっています。しかし、この説では再発はほとんどないという突発性難聴の特徴の説明は困難です。



突然に耳が聞こえなくなる(高度の難聴)と同時に、耳鳴りや耳がつまった感じ、めまいや吐き気を生じることもあります。めまいは約半数の患者さんに認められますが、

めまいはよくなった後に繰り返さないのが特徴です。

また、突発性難聴では耳以外の神経症状(四肢の麻痺や意識障害な ど)が認められないのが特徴です。発症が突発的であることから、

ほとんどの患者さんが発症の時期やそのときの状況を覚えていることが多く、「何時からかははっきりしないが、徐々に聞こえなくなった」このような難聴は突発性難聴ではありません。



●主症状

1.突然の難聴

文字通り即時的な難聴、または朝眼が覚めて気付くような難聴。ただし、難聴が発生したとき「就寝中」とか「作業中」とか、自分がその時何をしていたかが明言できるもの。


2.高度な感音難聴

必ずしも高度である必要はないが、実際問題としては高度でないと突然難聴になったことに気付かないことが多い。


3.原因が不明、または不確実

つまり、原因が明白でないこと



●副症状

1.耳鳴り

難聴の発生と前後して耳鳴りを生ずることがある。


2.めまい、および吐き気、嘔吐

難聴の発生と前後してめまいや、吐き気、嘔吐を伴うことがあるが、めまい発作を繰り返すことはない




【診断基準】

確実例 : 主症状、副症状の全事項をみたすもの。

疑い例 : 主症状の1.および2.の事項をみたすもの。



ストレスが原因でウイルスが活性化するとか、内耳の血液循環が悪くなるといわれていますが・・・ 。

突発性難聴で当院に通院されている患者様のほとんどが、あまりストレスを感じていません。

当院に通院される突発性難聴の患者様は、親知らずの治療の直後に発症した。口内炎が悪化した直後に発症した。

風邪をひいたと思っていたら、急に突発性難聴が発症した等が誘因になっているようです。

突発性難聴の患者様は、身体に歪みがあることが多く、一定の力が頚等にかかることが原因で、通常の方よりもストレスが多くかかるのかもしれません。

突発性難聴の治療は時間との戦いです。

発症後に神経の腫れを引かすためにステロイドをつかいます。 2週間のステロイドの治療の後は、耳の血液循環を良くする治療をします。

酸素を高圧で吸引したり、二酸化炭素を吸引することで血管を拡張させたり、星状神経節ブロックをする治療等があります。

交感神経が緊張すると血管が収縮して血液循環が悪化します。 星状神経節ブロックは交感神経が集まった星状神経節に麻酔をかけて血管を緩め血液循環をよくする治療です。

鍼灸治療はもともと自律神経の調整をする治療なので、星状神経節ブロックで治療効果の期待できるすべての治療を安全に副作用なくおこなうことができます

耳鳴りと血液循環

突発性難聴の発症時に、突発性難聴側の頚の血液循環が悪くなることが多くあります。

突発性難聴の原因の一つ言われる、内耳の血液循環の悪化と、頚の血液循環悪化は、ともに星状神経が原因だと考えられているので、

頚の血液循環が低下していれば、内耳の血液循環も低下していると想像されます。

突発性難聴では、音が大きく響く異音や音のゆがみ、高音性の耳鳴りに悩む患者様が多いですが、血液循環が改善されると、音の響きやゆがみ、耳鳴りがが改善さる傾向があります。

突発性難聴の鍼治灸療

発症からの時間経過で、目指すものが違ってきます。

突発性難聴の発症から3ヶ月は、聴力の回復を目指します。ステロイドの治療が終了して、内耳の血液循環をよくする薬や、

神経炎を改善する薬が処方される時期は鍼治療で内耳の血液循環を改善して、聴力の改善をはかります。



聴力が固定していまったら・・・・

自律神経を調整して、左右の聴力のバランスを保つ治療をします。

特に突発性難聴では気圧の変化にも敏感になるので、飛行機、地下鉄、天候の変化等。

鍼治療は特に、こんな後遺症の時期に効果的です。

鍼治療を受けるほとんどの患者様が、鍼治療後に、突発性難聴の後遺症が軽減されたと言います。

発症直後の突発性難聴の治療にはステロイド、その後、血液循環を良くする治療に移行したら、鍼灸治療を併用することが効果的です。

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耳鳴り

耳鳴を訴えて来院する人は少なくありません。健康な人でも、今まで一度も耳鳴を感じたことがないという人はおそらくいないと思います。

静かな部屋に入るとシーンという耳鳴がしたり、急激に気圧が変化する場合などには、一過性に耳鳴を感じることがあります。

このような耳鳴は放置しておいても心配はないのですが、耳鳴のなかには重大な病気の初発症状であったり、耳鳴が大きくて日常生活に支障を来したりする場合があります。

この場合には、耳鼻咽喉科専門医を受診して適切な検査や治療を受ける必要があります。

耳鳴には、当人だけに聞こえる自覚的耳鳴と、実際に音源が存在し、増幅すれば他人にも聞こえる他覚的耳鳴とがあります。

耳鳴のほとんどは自覚的耳鳴であり、単に耳鳴といった場合にはこの自覚的耳鳴のことを言います。

耳鳴を訴える患者さんの多くは難聴を伴っています。耳鳴と難聴は表裏一体のものと考えてもよいかと思います。多くの場合、耳鳴の大きさと「きこえ」の悪い程度とは一致しますが、

時には「きこえ」はあまり悪くないのに耳鳴がとても大きい場合や、その逆の場合もあります。


耳鳴りの原因

耳鳴の多くは、内耳にある音を感ずる感覚細胞の障害によるものです。この内耳障害には、ストレプトマイシンなどの薬剤による内耳障害、中耳炎の炎症が内耳に波及した場合、

めまい、難聴、耳鳴を3大症状とするメニエール病、ディスコなどで大きな音を聴いた時に起こる難聴(音響外傷)、今まで「きこえ」がなんともなかった人に急に難聴が起こる突発性難聴などがあります。

もちろん、内耳障害以外でも耳鳴が起こることもあります。その中では、「きこえ」の神経にできる腫瘍(聴神経腫瘍)に注意する必要があります。

耳鳴とともに難聴が徐々に進行してくるようなら聴神経腫瘍の可能性もあり、精密検査が必要です。その他、高血圧や糖尿病などの全身疾患により耳鳴が起こることもあります。


耳鳴りの西洋医学的治療

まず、原因がはっきりしている場合は、原因を取り除くことが原則です。聴神経腫瘍、中耳炎などによる耳鳴に対しては、手術が必要です。

しかし、原因が不明な耳鳴に対しては決定的な治療法や特効薬がないため、「治す」よりも「馴れる(馴らす)」方向で様々な試み・研究がなされています。

そのような場合や手術などの効果がない場合には対症療法が主体となります。一般に行われているのは薬物療法で、精神安定剤、ビタミン剤、血管拡張剤、代謝改善剤などが用いられます。

内耳の神経細胞の異常興奮を静める目的で局所麻酔剤を静脈注射したりすることもあります。

耳鼻咽喉科等で行っている治療法には、マスカー治療と混合ガス治療があります。マスカー治療とは、耳鳴を雑音で遮断して耳鳴を抑える方法です。

耳鳴の大きさと周波数を検査し、耳鳴を遮蔽するのに十分な雑音を出す機械を1時間装着します。

1時間後、雑音を止め、耳鳴の減弱や消失が数分から数10分認められた場合は、マスカーを貸し出し、1日数時間装着し、耳鳴を遮蔽すると耳鳴が減弱し、気にならなくなる場合があります。

混合ガス治療は、内耳の血流を改善する目的で考案されたものです。95%の酸素に5%の炭酸ガスを混合したものを30分間吸入すると、薬物を内服するよりさらに効果的に内耳の血流が増加し、耳鳴が改善される場合があります。

血流を増加させる目的で星状神経節ブロック療法が行われることもあります。


耳鳴りの東洋医学的治療

近年、東洋医学の分野でも専門化が進み、耳鼻咽喉科疾患における鍼灸による治療も専門化が確立されてきました。当院では鍼灸治療により耳鳴の治療効果をあげています。

耳鳴の原因について耳鼻咽喉科での精査を行った後、病院での治療として薬物療法、混合ガス治療、キシロカイン静注法等が行われています。

さらに鍼灸治療を併用することでさらなる効果が期待されます。

また、精神的ストレスや自律神経失調、不眠、頚や肩の凝りが耳鳴の原因であったり、増悪因子であったりする場合もあり、これらを鍼灸治療で治すことにより耳鳴の改善も期待できます。


耳鳴でお悩みの方に鍼灸治療を試みられることをお薦めします。

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メニエール病

フランスの医師、プロスパー メニエールが、それまでめまいの原因といえば脳卒中といわれていた時代に、めまいが内耳からおきることを初めて提唱しました。

それにちなんで、内耳性めまいのある種のものをメニエール病といっています。


内耳とは、耳の奥。平衡感覚や聴覚をつかさどっている器官です。

内部はリンパ液で満たされ、頭が動くと、リンパ液に流れが生じます。

リンパ液の流れ具合を感覚細胞がとらえ、上下、左右、前後の回転の動きを認識します。

リンパ液が過剰になり、水ぶくれ状態(内リンパ水腫)になると、感覚器の機能は乱され、ぐるぐるめまいや難聴、耳鳴りが起こります。

メニエール病は女性に多く、発症年齢は30歳代後半から40歳代前半にピークを持つ山型です

病理学的に内リンパ水腫を発見したのは、日本と英国の医師で1938年、なんと同時の報告でした。以来、70年以上内リンパ水腫がなぜ起こるのか、と世界中の研究者が追及してきました。

現在「原因とみられるメニエール病の‟病変″を、画像で確認できました」


球形嚢の耳石

内耳の‟病変″のあるところは細かく、複雑。約1立方㎝の中に、平衡感覚器官の三半規管、耳石器、聴覚器官の蝸牛等があります。

耳石器は長さ約5㎜。卵形嚢があり、耳石(炭酸カルシウムの結晶)が集まります。代表的なめまいに、良性発作性頭位めまい症(頭の位置を動かしたときに起こるめまい)があります。

この原因についての最も有力な仮説は、「卵形嚢の耳石がはがれ落ち、感覚器を刺激して発症する」


西洋医学的治療

薬による治療が主です。病態(内リンパ水腫)に対しては、水ぶくれを軽くする目的で利尿剤系統の薬を多く使います。中でも、イソソルビドが広く使われています。

また、内耳の神経細胞や内耳神経の活動を改善する目的で、ビタミン剤や末梢血流改善剤なども使います。

しかし、薬による治療でめまい発作を止めることができず社会生活に支障をきたすような場合や、聴力が段々悪化して行くときには手術も行われます。また、薬と手術の中間的な治療法もあります。


東洋医学的治療

まずご自分の生活習慣を見直してみましょう。

毎日規則正しい生活を送る。睡眠時間を充分にとる。忙しくなる前と後にはできるだけ休養をとる。

低気圧や寒冷前線などで症状が悪化することが知られているので、その日には無理をしない。時間に追われるのではなく、ゆとりある生活を心がける。休みの日には趣味やスポーツを楽しむ等。


メニエール病は、ストレスが誘因になっていることが知られています。働き盛りを襲う病気であることから、仕事の責任と重圧はかなりなものがあると考えられます。

適度なストレスはいきいきと生活するために必要ですが、過度のストレスはメニエール病だけでなく、他の病気の誘因にもなります。ストレスを解消する方法をみつけ、こまめに気分転換をはかりましょう。

 また、メニエール病は、内耳のリンパ液の循環不全という病態でもありますから、全身の血流をよくすることが大切です。

そのためにはウォーキングなどの「有酸素運動」が効果的です。一駅遠くまで歩くなど、生活の中で続けられる運動、また楽しみながらできる運動を試してみましょう。

メニエール病にかかると、「またいつめまいの発作が起こるか分からない」という不安から外出できなくなったり、仕事が続けられなくなったりすることがあります。

症状が落ち着き、気持ちも落ち着いたら、まずは誰かに同行してもらって少しずつ行動範囲を広げていきましょう。運動によって全身の血液循環も改善され、リンパ液の吸収にも役立ちます。

また、運動によって気分も良くなりますので、安定剤などを減らしていくことができます。外出できることが自信になり、不安感も解消されていきます。



鍼灸治療による治療

鍼灸治療の素晴らしいところは、わずかな刺激で大きな効果が得られるということです。

また、薬などのように外から何かを加えるのではなく、患者さん自身の自然治癒力によって治る力を引き出すため、副作用がない、安全な治療であるのも魅力です。

お薬と鍼灸治療を併用してもかまいません。(主治医にはご相談のうえ鍼灸治療を受診して下さい。)

メニエール病は内耳の病気と言われていますが、その発病の背景には、ストレスによる自律神経の失調があります。

自律神経には、緊張と興奮のための交感神経と、リラックスのための副交感神経があり、その2つの神経がバランスをとることで体の機能を整えています。

常に緊張を強いられる状態にあると、交感神経が常に優位になり、リラックスのできない状態が続いてしまいます。 人間は、副交感神経が優位であるときに体中の細胞が修復され、免疫力も向上するのです。

その機序からいって、メニエール病では意識的に副交感神経を優位にしてあげる必要があります。 鍼灸治療は、副交感神経を優位にすることが知られており、治療によって深いリラックス効果が得られます。

治療後はぐっすりと眠った後のような爽快感を感じることができるでしょう。

また、メニエール病の方は肩や首の筋肉が硬くなり、頭部の血液循環を悪くしていることが多いものです。内耳の血流をよくし、リンパ液の吸収を促進するためにも、コリはほぐさなくてはなりません。

鍼灸治療では、硬くなった筋肉に直接刺激を与え、ゆるめることが可能です。特に首の筋肉は細い筋肉が何層にも重なっています。

マッサージなどで表面からほぐすには時間もかかり、また深部までほぐそうと力を入れると、揉み返しといって翌日かえって首が痛くなったりすることもあります。

その点、鍼は髪の毛よりも細く、深部の筋をピンポイントで狙えますので、刺激が少ないのに効果が大きいのです。

メニエール病は耳の病気ですが、鍼灸治療で耳の周りだけに鍼を刺すとは限りません。 当院では、患者さん一人一人の体質を見極め、病んでいる経絡(気や血の通り道)を探して整えていきます。

たとえば、耳をつかさどっているのは「腎」の働きです。腎とは、腎臓そのものというよりも、腎が行っている体の機能を広く指す言葉です。腎は耳の機能だけでなく、骨や生殖機能も司っています。

腎は生命力そのものを支えると考えられていますので、歳をとると腎が弱り、骨粗鬆症になったり耳が遠くなったり、生殖機能が衰えるのです。

腎の経絡は足の内側、かかとのあたりを通っているため、腎の経絡を治したければ足に鍼を刺すこともあります。

また、内リンパ水腫という病態を考えると、体の中の水分調節がうまくいっていない状態ととらえることもできます。 水分調節を行っているのは三焦(さんしょう)経です。

三焦とは架空の臓器ですが経絡は手の外側を通っていると考えられています。したがって、手の外側に鍼を刺すこともあるのです。 あるいは、「肺」も「水の上限」であり、水分代謝に関係すると言われています。

呼吸によって水分も排出されることから、生理学的にみても説明のつく理論と言えるでしょう。 肺経は手の内側を通っています。

「脾」も水に関係する経絡です。脾は広く消化器を指す概念であり、栄養や水分が吸収されるのは消化器ですから、これも生理学的に考えても矛盾はありません。 脾の経絡は足の内側を通っています。

そして、もう一つ水に関係する経絡があります。先ほど述べた「腎」がそれです。腎臓の働きを生理学的に説明すると、腎臓は、血液中の水分を調節する臓器です。

水分を摂りすぎた場合など、水分が多すぎる場合にはおしっこをたくさん作って体外に排泄し、逆に汗をたくさんかいたり、水分が摂れないような状況では、水分を再吸収しておしっこの量を減らします。

鍼灸治療では、腎の経絡を整えることで耳の機能と水分代謝の両方にアプローチすることができるのです。

このように、メニエール病という病名は1つでも、病の原因は1つとは限りません。 患者様の体質を見極めたうえで、もっとも効果的な経絡を選び、整えることが必要なのです。

それに加えて、経絡やツボ(経絡の中のいくつかのポイント)という考え方と、筋肉や神経という解剖学的な視点を組み合わせて鍼を刺すこともあります。耳の周りに局所的に鍼を刺すことももちろんあります。

全身の調整を行ったうえで局所的な治療も行える。それが鍼灸治療の強みです。

まだ鍼灸治療を体験されたことのない方には、ぜひお試しいただきたい治療法です。


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